マーケティングのためのデータ分析とは「デートに3回行った人は恋人ができやすい」を知ること?

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マーケティングの強い味方、マジックナンバー

Webサービスのグロースハックや、広告・マーケティングのためのデータ分析において、マジックナンバーという言葉がよく使われる。

たとえば、みなさまご存知のFacebookでは、「アカウント作成後10日以内に7人の友達とつながる」という行動をとったユーザーは、長期間Facebookを使い続ける割合が高い(=リテンション・定着率が高い)という法則を見つけ、ユーザーにその行動を取らせるような施策を投じたそうだ。

このような場合の「10日以内に7人」という数字の部分がマジックナンバーと呼ばれる。つまり、「ビジネスKPIに影響のある、数字に基づいたユーザーの行動パターン」のことだ。

他のサービスにもマジックナンバーが存在する。

Dropboxは「1台の端末に1つのフォルダを作り、少なくとも1つのファイルを保存する」というパターンを発見し、Slackでは「1つのグループで2000メッセージが送信される」というのがKPIに関係のある行動パターンとして定義されているそうだ。

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マジックナンバーはビジネスを活性化させるために重要な指標で、グロースハックとかマーケティングのためのデータ分析に関わる書籍のほとんどでケーススタディとして紹介されている。

Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 (THE LEAN SERIES)

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マジックナンバーに因果関係があるとは限らない

さて、それでは企業のマーケティング担当者やWebサービスのグロースハッカーは、データから「アクションXをN回行ったユーザーはm%アクティブ率が高い」などという示唆を得たのちに、「アクションXをN回取らせる」施策に注力することで、ユーザーの高いアクティブ率を保証できる――本当だろうか?

そもそも、「アクションXをN回行ったユーザーはm%〇〇しやすい」ということがわかったら、「アクションXをN回取らせる」という施策でOKなのだろうか。

この問いは、「異性とデートに3回行った人はそうでない人よりもより恋人ができやすい」というデータがわかったら、「とにかくデートに3回行かせる」のが正解なのだろうか、ということだ。

こう考えてみると、

  • デートに3回行ければ相手は誰でもいいのか?
    • デートと言っても相手によるのでは
  • そもそもデートに3回も行きたくなるような相手だから、恋人が出来たんじゃないのか?
    • 回数ではなく潜在的な好意が大事なのでは
  • もともと恋人が欲しいと思っている人だから、デートをする意思があったのではないか?

など、アクションの背後にある潜在的な情報を疑りたくはならないだろうか?

個人的にはこのあたりのことが判然としないまま分析を続けていたのだが、マジックナンバーで成功裏を収めたと言っても過言ではないFacebookのグロースハッカーが分析のフローを紹介していたのを読んで、目から鱗などが落ちたのでここで共有させていただきたい。

Facebook流、マジックナンバーの分析のフロー

1. Defining the success metric

  • よいユーザー(Successful Users)がどういうものか決める
    • ex) たくさん商品を買ってくれる人?消費量が多い人?

2. Exploring the data

  • コホート分析を行う
    • Nヶ月以内に登録したユーザー、などと期間を限定すること
  • ユーザーごとに、1で定義したSuccess Metricとその他の行動変数を加えたテーブルを作成する
    • 相関テーブルを作ってみるとよい
    • ただし、因果関係は必ずしもない

3. Running the regression

  • 重回帰分析を行う
    • ただし、重要な行動変数が多いと分析の意味があまりないので、シンプルな解を目指す
    • ex) たとえばECサイトなどで「商品の購入種類数も大事だし」「商品一覧ページの滞在時間も大事だし」と優先順位が付けれないのはNG

重回帰分析についてはこちら

honawork.hatenablog.com

4. Verifying your model

  • ABテストを行って実証する
    • ここで、重要でないと判断したらテーブルに入っていた指標を捨てるのも辞さないこと

5. "Branding" your model

  • 社内に啓もうする
    • データを補強したり
    • 指標に名前をつけたり
    • 繰り返しメンバーに伝えたり

筋のよさそうな方針を立てるのみ

読んでみて、「やっぱり因果関係ないこともあるんだよね!?」「え、ABテストやっぱりするの!」と目から鱗でした。(私は何か真理のようなものがあると錯覚しているのかもしれません)

つまり、マジックナンバーの分析の本質は当たりをつけることであり、筋のよさそうな方針を立てることでしかない、というよく考えたら当たり前なことに気付きました。(わかっていた人には当然でしょうか・・・)

「デートに3回行ったから恋人ができたわけではなく、恋人になるような人だからデートが3回も続いたのでは?」というような議論はしてもしょうがない部分があり、「わからないけど、でもそんな気がするから、恋人ができる確率を上げるために、一旦デートに3回行かせてみて、蓋を開けて見てみようか」とやるのがマーケティングのためのデータ分析のようです。